昔からパイプカットをしたいと思っていて、2023年3月にやっと手術することができた。手術は無事成功し、精液中の精子はゼロになった。性欲や勃起などの性機能には変化はない。
この記事ではパイプカットをした感想や、施術の流れ、費用などについて書いていく。
パイプカット(精管結紮術)とは
パイプカットしたことを人に言うと、
「ちんこ取ったの?」
「金玉取ったの?」
などと勘違いされることがあるので、一応パイプカットの概要について書く。
パイプカットとは、精管という、精子が通る管を玉袋から少し引きずり出して切り、両端を糸で縛ることで、精子が精液の中に送り出されるのを止め、100%の避妊を実現する手術だ。
精液=精子ではなく、精液自体はほとんど前立腺液と精漿というもので構成されているそうだ。そこに精子が精管という管を通ってきて混じり、最終的な精液になるという感じ。ドリンクバーのような構造(炭酸水にコーラの原液を混ぜるような仕組み)になっていると思っていいんじゃないだろうか。精管を切断することで精液に精子が一匹も混じらなくなり、仮にゴム無しで中で出したとしても妊娠することは100%なくなる。
睾丸を取るわけではないので、性欲、性感、勃起力、精液の量、ホルモンバランスなどには一切影響がないとされている。昔からある単純な手術だが、日本では未だにパイプカット=ちんこや金玉を取ることだと思っている人が多い。
パイプカットした理由
パイプカットをした理由は単純で、絶対に子供がほしくないからだ。パイプカットは、すでに子供がいて、これ以上はいらない、という人が受ける手術だが、俺は子供が一人もいないのにもかかわらず受けた。念のため書いておくが、遊びすぎて女性に子供を堕ろさせたから、などの理由はない。
反出生主義?
子供がいらない理由に関しては、経済的理由、子供が好きじゃない、この世の中に子供を作って苦しめたくない、など多くある。最後の理由は反出生主義的だが、俺は自分を反出生主義者だとは思っていない。「この世は苦しみのほうが多いから、すべての人間は子供を作るべきではない」などとは思わないからだ。他人が子供を作ろうが、俺にとってはどうでもいいことだ。なので、俺の考えはどちらかと言えばチャイルド・フリーに近いかもしれない。
俺なりのフェミニズム
子供がいらないなら毎回ゴムをすればいいんじゃないかという意見があると思うが、ゴムは100%の避妊効果があるわけではない。破れる場合もあるし、知らない間に抜けている可能性もある。それらに気づいた場合は翌日急いで婦人科に行き、女性にアフターピルを飲んでもらう必要があるが、アフターピルは体に大きな負担がかかると聞く。
破れても抜けてもないがどこかのタイミングで精液が漏れていて、結局妊娠してしまった、という話もないことはないようだ。俺はこれまで付き合った女性に、ゴムをしているのにもかかわらず「生理が来ない」と言われたことが何度かあり、そのたびに生きた心地がしなかった。なので、100%確実に避妊できるようにしたかった。
避妊を確実にしたいなら、女性側にピルやミレーナを使用してもらうという方法もある。だが現代医療に対して懐疑的な俺は、女性にピルを飲んでもらうのは避けたかった。
ミレーナも同様。子供が二人いる主婦の友人が
「ミレーナのせいかはわからないけど、たまに耐え難いほどの痛みが走ることがある」
と言っていたので、やはりミレーナにもなにかしらのリスクはあるのだろうと思った。
女性版のパイプカットとも言える卵管結紮術なんかは、全身麻酔をしてお腹にメスを入れる必要があり、大掛かりとなる。その点パイプカットはとてもシンプルで、局所麻酔で済み、施術は15分もかからない。どう考えても、男性器の構造は避妊に適している。精管を切って縛るだけで100%の避妊が可能というのは、あまりにもよくできている。
その他の理由としては、昔冗談で言っていた
「ゴムをつけてセックスするのはまんこの感触をちゃんと味わえないから女性に失礼」
というものがあるが、半分くらいは本気だ。
女性の体に負担をかけさせたくないということにしても、ゴムを付けるのは女性に失礼云々にしても、要するに俺なりのフェミニズムだ。
費用
パイプカットの費用はだいたい20万円くらいとされる。名古屋に住んでいた頃は近くのどの病院もそのくらいしたので、施術をためらった。たかが15分で終わる単純な施術なのに、20万円は高い。俺が受けた病院では、痛み止め、抗生物質などの薬代も込みで10万円以下と格安だった。
20万円くらいかかる病院では、精管の結紮は糸ではなくレーザーで行われることが多いようだ。体内に糸が入っている状態がどうしてもいやな人は、高い病院で施術してもらったほうがいいかもしれない。俺は二重の埋没法をしていて瞼にも糸が入ったままなので、そういったことは気にならない。
子なし・配偶者なし・同意書なしでも施術してくれる病院について
基本的にパイプカットは、子供がいない人にはしない、という医者が多い。後で考えが変わってひどい後悔をされる可能性があるからだろう。
自分が調べた限り名古屋の病院はすべてそうだった。一つだけ『子供がいなくても、女性(配偶者など)の同意書があれば考える』というところがあったが、女性の同意書を書いてもらうのも人によっては大変だ。その病院いわく女友達に書いてもらってもいいとのことだが、あとで後悔されたらいやだからと、書いてくれない女性が多いだろう。なので、やはり子なし・配偶者なし・女性の同意書なしでも施術してくれる病院を探す必要がある。別の県に引っ越してから偶然近くにそういう病院があったので、すぐに来院した。
おそらくこの記事を読んでいる人はそういう病院を探していると思うが、ここに俺が施術してもらった病院名を書くと病院に迷惑になるかもしれないので避ける。比較的都会にある病院で、費用は10万円以下、ということだけ書いておく。
施術の流れ
1回目の来院では、パイプカットしたい理由などのカウンセリングを行った。
フランクな医者で
「絶対に後悔しないな?」
というような強い確認はなく、じゃあやるか、という感じだった。
パイプカットの施術で予約がいっぱいの名医のため、俺の施術は1ヶ月後となった。
1ヶ月後来院し
「じゃあ始めるけど、今ならやめてもいいよ」
という軽い確認の後、パンツを脱いで台の上に寝た。
睾丸を強めに触診した後、竿の根本あたりの玉袋に左右一回ずつ麻酔注射を打った。これが施術の中で最も痛かった。麻酔が効いてきた頃、まず右の玉袋の麻酔を打ったあたりに1cm程度のメスを入れ、医師が精管を引き出した。
麻酔が効いているので痛みはほとんどなかったが、医師が
「これが精管や」
などと言って引っ張った際、鼠径部がだいぶ痛かった。
医師は引き出した精管を医療用のハサミのようなもので固定していた。施術の様子を見たかったので、上体を起こして見る許可をもらい、精管が切られる瞬間から糸で縛る瞬間までを見た。見て満足したので、もう片方の精管のときは見なかった。
両方の精管の施術が終わると、玉袋のメスを入れた部分を縫合し、消毒し、ガーゼを当て、ガムテープを腰まで巻き付けて固定された。痛み止めと抗生物質を処方箋に貰いに行き、ラーメンを食べて帰った。
術後の痛みと感染
手術直後6時間くらいは麻酔が効いていたので痛みは感じなかったが、切れてきてからは少しずつ痛みが出てきた。睾丸周辺ではなく鼠径部に痛みがあったのを覚えている。だが、睾丸を蹴られる痛みに比べると全然ましで、結局痛み止めは最初の1~2錠しか飲まなかった。椅子に座ってる状態から立つときが特に痛く、足を組むのも避けていた。特に術後すぐは傷が開く可能性があるので、激しい運動やセックスはもちろん、自慰行為も避けたほうがいいとのことだった。
1週間後に抜糸したが、これもなかなか痛かった。その後2週間くらいは鼠径部の痛みが続いたが、1ヶ月ぐらいで収まった。
俺は感染をなにより恐れていて、もし変な菌に感染して睾丸が野球ボール大に腫れ上がり、切除することになったらどうしようと思っていたが、杞憂だった。傷口は膿むこともなくきれいに塞がり、目立つこともない。万が一感染が起こったとしても、ほとんどの場合追加の抗生剤や施術でなんとかなるように思う。
無事精子ゼロへ
施術後、痛みが引いてから5回くらい射精をし、精液を試験管にとって病院に郵送し、精子がゼロになったか確認してもらう必要がある。ネットで、『パイプカットしたのに、何度検査しても精液中に精子が僅かに残っている』という人の情報を見たので、これも心配していた。精子がゼロにならなければ100%の避妊ではなくなってしまう。
俺の場合は無事精子ゼロが確認され、パイプカットは成功した。
元に戻すことは基本的に不可能
元に戻せるのかという質問をされることがあるが、基本的には不可能なようだ。一応、切れて縫合された精管を再度つなぎ合わせる施術をしてくれる病院もあるようだが、100万円近くの費用がかかり、成功率も低いらしい。俺のように子供がいないのにパイプカットをしたいという人は、絶対に後悔しないように徹底的に考え抜いてから施術を受けたほうがいいだろう。
逆に、何年も経つと切って縛った精管が自然とくっついて再開通してしまうんじゃないかという懸念に関してだが、医者に尋ねたところそういったことはほぼ100%無いと思っていいとのこと。どうしても心配な人はTENGAルーペ(スマホカメラで精子の検査ができるキット)などを買って、自分で定期的に精子の検査をするという手もある。
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デメリット、後遺症など
パイプカット後半年程度は、縛られた精管が玉袋の中でしこりとして残っていた。竿側の精管の端も睾丸側の精管の端も、しこりとして確認できる。1年半以上経つ今でも、だいぶ小さくなったものの残っており、触ると少し痛い。
最初の方にも、パイプカットは性欲、性感、勃起力、精液の量、ホルモンバランスなどには一切影響がないと書いた。実際俺の場合も、それらに一切変化はない。
しかし、パイプカット後になって、玉袋と内ももの間の汗が臭くなったように思う。ワキガのような匂いではなく、精液のような匂いだ。夏場などはかぶれることもある。匂いの強い汗はアポクリン汗腺によるものらしいが、精管を切除したことで、アポクリン汗腺が増えた、などということがあるだろうか。俺は30代なので体質の変化や加齢臭という可能性もあり、明確な因果関係は立証できない。
施術してくれた医者にも電話で聞いてみたところ、毎日のようにパイプカットの施術をしているが患者からそのような話を聞いたことは一度もないと言われた。ネットで調べると日本のサイトでは出てこないが、海外のサイトでは『パイプカット後に股間の汗が精液っぽい匂いがするようになった』という投稿があった。珍しいパイプカット後遺症か、ただの加齢による体質・体臭の変化か、どちらかはわからない。自分もパイプカットをしてそうなるのではと懸念される方は一度医師に相談してみるといいかもしれない。
現在
実は術後少ししてから
「これで完全に子孫が残せなくなったんだな」
と、自分で決断したことながら軽いショックがあった。
しかしそんな気持ちはすぐに消え、今は
「これで安心してセックスできる」
「ゴム代の節約になる」
と、しっかり恩恵を感じている。子供いらないからパイプカットした、などと言って、人との会話のネタにもなっている。
子無しでパイプカットをするというのは
「すべての生き物にとって、子孫を残すことだけが生きる目的だ」
という思想の人からすると愚か極まりない行為だと思うが、俺にとっては子孫を残す・残さないなどどうでもいいことだ。自分自身がこの人生を・この自我をどう生きるかが大事だと、俺は考えている。
まとめ
以上、施術から約1年半経ってからではあるが、パイプカットのレポートでした。パイプカットする際の参考にしてもらえればと思う。
最後に
「パイプカットしたということで、生中出しはしたんですか?」
という質問に対しては、はい、と答える。